特定技能外国人を雇うために必要な4つの基準

特定技能外国人を雇用する場合は大きく分けて下記4つの基準を満たさなければなりません。

  1. 雇用に関する契約(特定技能雇用契約)の基準
  2. 本邦の公私の機関(特定技能所属機関)の基準
  3. 支援計画に関する基準
  4. 申請人の上陸許可基準

まず1つ目が適切な雇用契約をすること、2つ目が会社などの雇用する側の要件について、3つ目が会社が行う外国人の支援について、そして4つ目が外国人の上陸許可基準についてとなります。

1. 雇用に関する契約(特定技能雇用契約)の基準

特定技能外国人を雇用する場合は特定技能外国人との間で雇用契約などを締結しなければなりませんが、日本人を雇用する時よりも注意しなければならない点があります。この注意しなければならない点は大きく分けて2つになります。

  1. 雇用関係に関する事項
  2. 外国人の出国や外国人の適正な在留に資するために必要な事項

1.雇用関係に関する事項

1つ目は雇用に関する事項になります。

本邦の公私の機関は特定技能外国人を雇用する場合、日本人を雇用する時と同程度の内容の雇用契約を締結しなければなりません。つまり、外国人だからという理由で給与を日本人よりも低く設定したり、福利厚生を少なくしたりすることはできません。

この雇用契約に関する遵守事項として下記のものがあげられます。

・労働基準法その他の労働に関する法令の規定に適合していること
・外国人が従事できる仕事は法令で定められた分野で且つ相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能を要する業務などであること
・外国人の所定労働時間が、特定技能所属機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること。
・外国人に支払う報酬は日本人が従事した場合と同等以上のものであること
・外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと。
・外国人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させるものとしていること。
・外国人を派遣する場合は当該外国人が労働者派遣等をされることとなる本邦の公私の機関の氏名又は名称及び住所並びにその派遣の期間が定められていること。
・前各号に掲げるもののほか、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。

基本的には給与、休憩、休暇、有給など労働基準法等の法令を遵守していれば問題ないと思います。また育児介護休業法なども該当しますので、外国人が妊娠、出産する時、親の介護をする時なども日本人と同様に扱うことが求められます。

しかし、いくら頭ではわかっていても日本人の外国人に対する偏見はまだまだ残っているといえます。外国人を安い労働力としてしか考えていなければこのような手当てを出すことは難しいでしょう。

しかし、それではいけません。外国人だからといって差別的な取扱いをしてはなりません。日本人を雇用する時と同等以上の待遇が必要だという点を理解しましょう。

外国人従業員の満足度をあげることが重要

特定技能は転職も可能ですので、違法や差別的なことをしている会社には今後外国人は集まらなくなると思います。
むしろ、外国人が必要な会社は、いかに外国人を職場に定着させる工夫をするなど
より一層の企業努力が求められると思います。

逆に特定技能外国人を雇用する際の特有のものもあります。

「特定技能外国人が従事できる仕事は法令で定められた分野で且つ相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能を要する業務などであること」とありますが、簡単にいうと特定技能外国人は決まった分野などでしか働けません。

これは外国人は在留資格ごとに従事できる仕事が決まっているからです。特に特定技能は建設や飲食など分野ごとに働ける仕事が限定されております。そのため雇う側である会社も注意しなければなりません。

2.外国人の出国や外国人の適正な在留に資するために必要な事項

次に外国人の出国や外国人の適正な在留に資するために必要な事項になります。

前述しましたが、外国人は在留資格ごとに従事できる仕事が決まっています。逆にいえば仕事をしないのであればその他の在留資格に変更しない限り本国に帰国しなければなりません。万が一、帰国しなければ不法滞在者となります。そしてこの不法滞在者は日本にとって悪影響を及ぼす危険があります。

そこで法令では特定技能所属機関に雇用だけではなく特定技能外国人の出国や在留についても規定しています。主な内容は下記のとおりです。
・外国人が雇用契約の終了後の帰国に要する旅費を負担することができないときは、特定技能所属機関が、当該旅費を負担するとともに、雇用契約の終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること。
・特定技能所属機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること
・前各号に掲げるもののほか、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること

つまり1つ目の基準では特定技能外国人を日本人と同等以上の待遇で扱う必要があり、且つ、その外国人の健康面や生活面でのサポートまでを行うことなどが規定されています。

以上が雇用契約に関する基準になります。

2. 本邦の公私の機関(特定技能所属機関)の基準

次は本邦の公私の機関の基準です。つまり特定技能外国人を雇用したいと思っている会社などに関する基準になります。本邦の公私の機関は下記の事項を確保するためそれぞれの基準に適応しなければなりません。

  1. 特定技能雇用契約を適正に履行すること
  2. 一号特定技能外国人支援計画を適正に実施すること(登録支援機関に適合一号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合を除く)

1.本邦の公私の機関自体が満たすべき基準

まずは特定技能雇用契約の適正な履行の確保をするために契約の相手方となる本邦の公私の機関の基準を定めています。下記の基準に抵触している会社などは特定技能外国人を雇用することはできません。

・労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること
・1年以内に外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないこと(定年など一定の事由に該当するものを除く)
・1年以内に特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないこと。
・次のいずれにも該当しないこと
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者・・・他多数
・雇用契約に係る必要書類を備えつけること
・保証金や違約金などの目的で締結された雇用契約でないこと。
・一号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させないこと。
・外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関にあっては、規定された内容を遵守すること
・労働保険などの成立の届出その他これに類する措置を講じていること
・特定技能雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
・報酬は外国人が指定する口座に原則支払うこと
・前各号に掲げるもののほか、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること

つまり、特定技能外国人を雇用する会社には税金や社会保険など公的義務を遵守している必要があり且つ外国人に対して違法・不当な扱いを過去や将来においてしないことなどが求められています。

2.本邦の公私の機関自体が満たすべき支援体制の基準

次に特定技能外国人を雇用したいと思っている会社の支援体制についての基準です。会社は特定技能外国人を雇用する場合は適切な支援をしなければなりません。この支援とは一号特定技能外国人支援計画に基づいて行われます。支援は外国人に対して行いますのでその外国人が分かる言語によって支援ができる体制や今までに外国人の支援を行ってきた実績などを基準として求めています。

ただし、この支援は登録支援機関に全部を委託することができます。なので、会社が支援体制の基準を満たさなくても特定技能外国人を雇用できる場合があります。

1 次のいずれかに該当すること

イ:過去2年間に中長期在留者(例外あり)の受入れ又は管理を適正に行った実績があること
ロ:役員又は職員の中であって過去2年間に中長期在留者(例外あり)の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から支援計画の実施責任者及び担当者を選任すること
ハ:上記の他、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもの

2 支援計画に基づく職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を当該外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること

3 支援の状況に係る必要書類を備えつけること

4 支援責任者及び支援担当者が次のいずれにも該当しない者であること
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者・・・他多数

5 契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に適合一号特定技能外国人支援計画に基づいた一号特定技能外国人支援を怠ったことがないこと。

6 支援責任者又は支援担当者が外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること

7 前各号に掲げるもののほか、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること

以上が本邦の公私の機関自体が満たすべき基準になります。

これ以外にも本邦の公私の機関には特定技能雇用契約の締結の日前5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしていないことを含むものとされていますが、あまり深く考えなくていいと思います。

一般的に公的義務を遵守しており、外国人を受入れた実績などがあり、法的に特段違反したことがない会社であれば問題ないと思われます。

3. 支援計画に関する基準

3つ目は支援計画の基準です。先ほど会社は特定技能外国人を雇用する場合は適切な支援をしなければならないと記載しましたが、その支援の内容が規定されています。

支援には以下の1~5の内容を定め1号特定技能外国人支援計画に記載します

1 支援する内容

イ 在留資格認定証明書の交付(在留資格の変更)の申請前に、当該外国人に対し、特定技能雇用契約の内容など留意すべき事項に関する情報の提供を実施すること(対面により又はテレビ電話装置その他の方法により実施されること・外国人が十分に理解することができる言語により実施されること)
ロ 当該外国人が出入国しようとする港又は飛行場において当該外国人の送迎をすること
ハ 当該外国人が締結する賃貸借契約の保証人、住居の確保に係る支援、銀行などの口座の開設、携帯電話の契約などその他生活に必要な契約に係る支援をすること
二 当該外国人が本邦に入国した後(在留資格の変更を受けた後)、次に掲げる事項に関する情報の提供を実施すること(外国人が十分に理解することができる言語により実施されること)
(1)本邦での生活一般に関する事項
(2)外国人が履行しなければならない届出などに同行すること
(3)生活に必要な日本語を学習する機会を提供すること。
(4)相談苦情に応じるとともに助言、指導その他の必要な措置を講ずること。
(5)外国人と日本人との交流の促進に係る支援をすること
(6)外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合において新しい就職先で活動できるように支援をすること
(7) 支援責任者又は支援担当者が当該外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施し、労働基準法などに違反していることを知ったときは関係行政機関に通報すること。

2 登録支援機関に支援を全部委託する場合は当該契約の内容

3 登録支援機関以外に委託する場合は委託先や委託契約の内容

4 支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職名

5 前各号に掲げるもののほか、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める事項

4. 申請人の上陸許可基準

最後は申請人の上陸許可基準になります。申請人とは特定技能外国人のことです。特定技能外国人を保護するために来日において金銭や保証金を仲介業者などに徴収されないよう規定しています

申請人が次のいずれにも該当していること。

1 申請人が次のいずれにも該当していること。
イ 18歳以上であること。
ロ 健康状態が良好であること。
ハ 相当程度の知識又は経験を必要とする技能※
ニ 必要な日本語能力水準。※
ホ 一定の外国政府又は地域の権限ある機関の発行した旅券を所持していること
ヘ 特定技能の在留資格をもって本邦に在留したことがある者にあっては、当該在留資格をもって在留した期間が通算して5年に達していないこと。

2 保証金の徴収等をされないこと。

3 申込みの取次ぎなどで外国の機関に費用を支払っている場合は、その額及び内訳を十分に理解して合意していること。

4 送り出し国において手続が定められている場合にあっては、当該手続を経ていること。

5 食費、居住費などを申請人が負担する場合は適正な金額で且つ理解していること

6 前各号に掲げるもののほか、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。

※技能実習を良好に修了している者でありかつ、当該修了している技能実習において修得した技能が、従事しようとする業務において要する技能と関連性が認められる場合は除かれます。

以上が、特定技能外国人を雇うために必要な4つの基準になります。


【用語集】
特定技能外国人・・・特定技能の在留資格で在留する外国人のこと
本邦の公私の機関・・・法人・個人を問わず日本にある事務所や事務所などのこと
特定技能所属機関・・・特定技能外国人が所属している勤務先などのこと
法・・・出入国管理及び難民認定法

※本邦の公私の機関と特定技能所属機関の違いについて
本邦の公私の機関が要件を満たせば特定技能外国人を所属させることができます。そして特定技能外国人が所属している機関を特定技能所属機関といいます。


参考:出入国管理及び難民認定法 第2条の5第1~8項
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 第1~4条
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令

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