焼肉屋等の飲食店で外国人を雇用するための3つのポイント

焼肉屋で外国人を雇用したい

先日、ある焼肉屋さんから「うちの店で外国人を雇用したいがどうすればいいか?」というご相談がありました。

念のために説明すると、外国人が日本で働く場合、どんな仕事でも自由にできるわけではありません。日本における外国人の在留資格は27種類しかありません。そしてその中には焼肉屋をはじめ、飲食店で接客業務などで働く在留資格(以下、ビザ)というものはありません。そのため学生ビザなどの資格外活動許可を除いては外国人が飲食店で働くことはできないのが原則です。

※2019年から新たに「特定技能」というビザができ、そのビザで接客業務が可能となっております。このページは特定技能ができる前の「技術・人文知識・国際業務」について解説しております。

しかし、勘違いされている方が多いので説明しますが、そもそも入国管理局は飲食店で働くことは禁止しておりません。入国管理局は飲食店や美容室や行政書士事務所などの業種で規制はしておりません。規制しているのはその外国人が職場で何の仕事をするかについてです。先ほど飲食店で働くビザはないと書きましたが、これは飲食店の仕事が簡単な調理や接客など(以下 接客業務)が多いからです。つまり、正確に書くとすれば飲食店で働くビザがないというのではなく、接客業務を行うビザがないということになります。ゆえに、焼肉屋などの飲食店でも接客業務以外の業務であればビザをもらえる可能性がでてくるというわけです。

飲食店≠雇用できない

それでは飲食店で働く外国人がとれるビザとは何でしょうか?

結論からいうと、「技術・人文知識・国際業務」です。

日本で働く外国人の多くが「技術・人文知識・国際業務」というビザを持っています。

焼肉屋で外国人を雇用するためにはこの「技術・人文知識・国際業務」というビザをどのくらい知っているかがポイントになります。

それでは「技術・人文知識・国際業務」というビザがどんなビザなのか説明します。

まずは、入国管理局のサイトから「技術・人文知識・国際業務」が行うことができる活動内容を引用します。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学 その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(この表の 教授,芸術,報道,経営・管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,企業内転勤,興行の項に掲げる活動を除く。)

引用 在留資格一覧表

ポイントは、

  1. 法律学や経済学などの専門的な技術や知識を有していること
  2. 外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動

1.法律学や経済学などの専門的な技術や知識を有していること

簡単にいえば学歴のことです。

本国の4年制の大学を卒業している、又は日本で専門学校以上を卒業していることが判断ポイントとなります。

2.外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動

いまいち分かりにくいですが、外国人が外国語を使うなど、その外国人が日本で働くことの必要性があるかどうかが判断ポイントになります。

日本で働く必要性

以上を踏まえて、焼肉屋で外国人を雇用するための3つのポイントを説明します。

参考:就労ビザの要件をもう少し詳しく解説

焼肉屋等の飲食店で外国人を雇用するための3つのポイント

1:事務所の選定

飲食店の仕事が接客業務だとビザはでないと書きました。ですので、就労場所が店舗だとビザは難しいでしょう。

※2019年から新たに「特定技能」というビザができ、そのビザで接客業務が可能となっております。このページは特定技能ができる前の「技術・人文知識・国際業務」について解説しております。

これはお店ごとに違うので一概には言えませんが、一般的には就労場所が店舗ではなく、独立した事務所で就労することが必要になります。

2:外国人が働く必要性

次は外国人が日本で働く必要性があるかどうかについてです。その外国人が大学などで学んだ知識を活かせる仕事に就くことが必要になっております。また、その外国人の仕事の業務量が適正に確保されているかなども条件となっているようです。

例えば事務所を店舗と別に設けても、店舗が1つだけしかなく、且つ業務内容が食材の発注や備品管理では適正な業務量があるとはいえないでしょう。

3:雇用契約書

雇用契約書の写真

外国人の中にはお店との雇用関係がないにも関わらず働いていると見せかけてビザを不正に取得することがあります。このような勤務先として多く使われているのが焼肉屋などの飲食店です。

そのため飲食店は他と比べて審査が厳しいことがあります。

そこであらぬ疑いの目を払拭するためにも雇用契約書と雇用に至るまでの理由書の作成・提出は重要になります。

また、仮に晴れて「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得できた場合でもビザには更新があります。更新の時には法定調書や納税・課税証明書などの提出が必要になります。これらの書類は勤務先でしっかり勤務しているかの指標になります。勤務先は日本人を雇用する時と同様に日本の法律を遵守しなければなりません。

「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更

それでは実際に私が申請した「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更例を記載します。

この焼肉屋は台東区浅草周辺にある焼肉屋でした。申請人は春に専門学校を卒業したばかりで、どこにも就職できず特定活動のビザを持っていました。申請人はこの焼肉屋で学生のころから接客業務のアルバイトをしています。申請人は仕事がよくでき非常に真面目な性格です。そしてお店のオーナーも申請人を気に入りお店で社員として働いてほしいと考えています。

ポイント① 学歴

まず大事なポイントはこの申請人の学歴です。申請人は日本の専門学校を卒業しているので学歴は問題ありません。ちなみに特定活動とはビザの種類の一つです。他の在留資格に該当しない場合などによく使われます。今回のケースでいえば就職活動期間中に就職ができなかったので就職活動期間の延長のために変更されたビザだと考えていいでしょう。

ポイント② 雇用関係

次に大事なポイントは申請人がお店で働く必要性です。当たり前ですがアルバイトの時と同じように接客業務をするようならビザは変更できません。接客業務以外の業務でもお店は申請人を雇用したいのかどうか検討が必要になります。

入国管理局は非常にたくさんの情報を持っています。私達が想像する以上です。仮に申請者が虚偽の業務内容を申請しても、その内容はすべて保管されるので、後々自分の首を絞めることになりかねません。これは申請人だけでなくお店もそうです。虚偽の申請をすると申請人もお店も次回の審査はかなり厳しくなることでしょう。申請人は将来日本でどうしたいのか?お店は申請人を長期雇用をしていく覚悟があるのか?しっかり考え、当事者で話し合って決めることが重要だと思います。

ポイント③ 職務内容を考える

最後に一番大事なポイントは職務内容になります。「技術・人文知識・国際業務」というビザをしっかり理解して、外国人が安心して働ける場所を提供する必要があります。当たり前ですが嘘はいけません。この申請人がお店から期待されていることは述べました。上述しましたが、その外国人が大学などで学んだ知識を活かせる仕事に就くことが必要になっております。また、その外国人の仕事の業務量が適正に確保されているかも重要です。

しかし、外国人を雇う最大のメリットは何といっても通訳です。外国人が多数来日している現在、通訳を雇いたい企業はたくさんあると思います。ここで気を付けなければならないのは飲食店で雇用する通訳の可否です。飲食店ではメニューの読み方や食べ方などの説明に通訳が必要になることがあります。

しかし、飲食店での通訳は本来の通訳業務とは認めらず接客業務として判断される事が多いのが現状です。

そこで考えて欲しいのが、その外国人が来店するきっかけを作ることです。今は誰もがスマホで新しい情報を探しています。観光客は観光地で最高の思い出を作りたいはずなので評価の高い観光スポットや飲食店に行きたいと思っているはずです。

しかし、残念ながら日本人がそのような観光客に積極的にアピールできる機会は現状少ないと言っていいでしょう。なぜなら言葉が分からないからです。ですので、外国人を雇う時は「外国語+営業」の組み合わせで業務内容を考えていくことも1つの手です。

※何度もいうように嘘はいけません。業務内容はビザを取るためではなく、今後のインバウンドに対応するために会社の方針としてしっかり考えなくてはなりません。

まとめ

この案件は申請からわずか2週間で「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得いたしました。

重要なことは在留資格変更の許可を取るだけでなく、実際に外国人が増えていく日本を想像していくことです。

日本の飲食店は外国人観光客に対してまだまだ積極的な営業活動ができていないと感じています。FBに関しても運用している店はまだまだ少ないといっていいでしょう。ましてや外国語のFBを運用している店舗は圧倒的に少ないはずです。

日本の飲食店の中には美味くてもお客さんが来ないお店はたくさんあると思います。しかし忘れてはなりません。外国人観光客は常に美味いお店、感動するお店を探しています。

あなたが海外に旅行にいくとしたら、その国の名物を食べたいと思うだろうし、その国の文化を体験できるようなお店があればきっと行きたいと思うはずです。

このように日本の飲食店と外国人従業員が手を組めば、実はすごい相乗効果が期待できるのではないでしょうか。


おすすめの記事